貸株の利用とエネチェンジからの学び

資産運用の定番といえば株です。

私はここ数年、FX自動取引に注力していますが、そもそもそれを始めた原資の多くは株取引での利益からきているものでした。

また、常々書いていますが、

「持っている株を担保にFXをする」→「そのFXの収益で株を買う」→「その株を担保にFXでもっと収益を上げる」→繰り返し

というサイクルが現在私の目指しているひとつの資産運用の形態です。

そのサイクルから少し脱線するのですが、今年になってから”貸株”サービスを試しており、その中でいろいろ学ぶこともあったのでここに記したいと思います。

貸株とは

貸株というワードを聞いたことがある人も多いと思いますが、実際に利用している人はどれぐらいいるのでしょうか。

まず、貸株のサービス内容について確認します。

貸株サービスとは
証券会社各社が提供するいわゆる貸株サービスとは、投資家が、保有している株券等を証券会社に貸し出すことで、証券会社からこれに見合う貸株金利を受け取ることができるサービスです。証券会社は、投資家から借り入れた株券等を他の投資家等に貸し出すなどの運用を行います。

https://www.jpx.co.jp/learning/basics/others/stock-lending/index.html

こちらは、日本取引所グループのウェブサイトからの引用です。

内容としては比較的単純で、”持っている株を貸して、その分の金利をもらう”ということです。

お金を銀行に預けて利子を受け取るのと同じようなイメージですね。

貸株の金利

銀行の利子って0.000・・・と小数点以下のゼロが沢山つくイメージが強いですし、実施そうです。

貸株の金利はどうなんでしょうか?

2024年7月18日時点で楽天証券の情報をみますと、年利0.1~7.25%となっています。

金利は株によって異なりますし、その株の貸し出しの需要と供給の状況等により変動します。

いずれにせよ、銀行の利子に比べて大幅に高いですね。

貸株のメリットとデメリット

金利が高いということは、もちろんその分なんらかのリスクがあるということです。

しかし、リスクを取らずして資産運用はできませんし、資産は増やせません。

貸株のメリットとデメリットを確認し、私が貸株を実際に始める前に考慮した内容を整理してみます。

貸株のメリット

・持っている株を貸すだけで金利が毎月もらえる。

貸株のデメリット

・貸している証券会社が倒産すると貸した株は返ってこないリスクがある。

・金利が高い株は株価が下がるリスクがある。

・貸している間は名義が変わるので、長期保有の条件がある株主優待に影響がある。

細かいものは他にもありますが、主要なものはこんなところでしょうか。

では次に、これらのメリット・デメリットに対し、わたしがどのように考えてサービス利用に至ったのかを整理します。

メリット・デメリットをどう考えるか

前項であげたメリット・デメリットについて、今回考慮したことをそれぞれ記載します。

・持っている株を貸すだけで金利が毎月もらえる。

業績が黒字の株を持っていると、多くの場合配当金がもらえます。

配当金をもらえるのは嬉しいですが、配当金に関して一般的に以下のような要素があります。

配当金の要素

・もらえる回数は多くが年に2回。

・配当利回りが高いところで4%前後で、多くはそこまで高くない。

・会社の業績が悪いと減配・無配になる。

・会社の方針として配当金を出していないところもある。

つまり、業績が悪い会社の株では配当金がないこともあたりまえです。

しかし、貸株の場合はそのような会社の株でも配当金の代わりに貸株金利が入ってきます。

また、配当金は年に2回のところが大半ですが、貸株金利は毎日発生し、それが積み重なったお金が毎月入ってきます。

これらは非常に魅力的ですし、貸株利用の検討の余地があるメリットと言ってよいでしょう。

・貸している証券会社が倒産すると貸した株は返ってこないリスクがある。

投資者保護基金の対象ではなく、無担保で貸すことになるため、最悪全部を失うことになります。

これは結構なリスクですね。

ただ、証券会社の倒産は日常的にあるようなことでもないですし、「ある程度規模が大きくて信用のおける証券会社の口座を使う」「保有している株式の一部しか貸株に入れない」といったことを考慮すれば必要以上に恐れることはないとわたしは判断しました。

・金利が高い株は株価が下がるリスクがある。

貸した株は、空売りの原資となります。

貸した株を使って空売りがされるということは、つまり貸株の需要が高まると空売りも沢山されて株価が下がっていく可能性も高いことは容易に想像がつきます。

そういった状況にある株の多くには、”クソ株”・”ボロ株”と呼ばれるかなりどうしようもないような会社も含まれているでしょう。

ただ、逆に考えると「現在業績がぱっとしないけど、今後復活できる要素がある株」を買っておけば、業績低迷中は高い金利をもらいつつ、将来はキャピタルゲイン・配当金を得ることができるかもしれません。

正直ここはもっともリスクを感じたところでしたが、その分のメリットも大きいので、わたしが貸株を試してみる価値はあると思った一番のポイントでした。

※そしてさっそく紆余曲折あったので、その内容は後述します。

・貸している間は名義が変わるので、長期保有の条件がある株主優待に影響がある。

まず、貸株で入ってくる金利分は雑所得になるので、配当金とは税務上の取り扱いが異なります。

そこは説明しはじめると長くなるのですが、貸株を使うか・使わないかの判断ではあまり重要ではないので、ここでの説明は省きます。

一方で、”名義が変わることで株主優待に影響がある”というのは非常に気を付けなければならないポイントです。

配当金よりも株主優待が充実している会社も多いですから、それを失う経済的リスクは高いです。

株を貸すと、貸している間は名義が自分ではなくなってしまうのですが、多くの貸株サービスでは「配当・株主優待の権利日に、自動的に貸株を返却する」というオプション設定があります。

これをしておけば、貸株で金利を得つつも、株主優待もしっかりいただけます。

ただ、会社によっては、「株主優待は、単元株を1年以上継続保有の株主に贈呈」のように、保有期間の条件がついているものがあります。

株を貸している間は保有期間とみなされませんから、つまりこういった条件の株主優待はもらえないリスクがあります。

ただ、これについては、そのような条件がある株に対してそもそも貸株をしないということで基本的にリスクが回避できます。(どの株をどれぐらい貸すかは自分で決められます)

貸株の利用方針

以上のようにメリット・デメリットに関して検討した結果、わたしは貸株を使ってみることにしました。

貸株運用にあたっての、私の方針は次のとおりです。

  • 複数の証券口座のうち一つだけで貸株を利用。
  • 金利だけを見ないで将来の事業拡大がイメージできる会社の株を買う。
  • 配当がでない間だけ貸し出しをし、業績が回復して配当が出始めたら貸し出しを終了。

まず、証券会社は楽天証券で行うことにしました。

わたしは主に楽天証券とSBI証券の2つを株取引に利用しているのですが、SBI証券は株式の代用管理(株券担保サービス)を使っているので、物理的に?SBI証券では貸株の申し込みができませんでした。

そのため、特に比較検討する必要もなく楽天証券の一択でした。

しかし、後になってみてみると、楽天証券の貸株は「貸株サービス」「信用取引口座の併用」「代用有価証券の貸し出し」の全てが可という部分でSBI証券の貸株よりも勝っているということでしたので、その点からもよい選択でした。

そして、「金利だけを見ないで将来の事業拡大がイメージできる会社の株を買う」は、これができたらみんな苦労しませんね。

だからこそここに挑戦する価値があるわけです。

この挑戦は始まったばかりですが、その一部を次で紹介します。

エネチェンジで大失敗

貸株を考慮して何社かの株を買い、うまくいっているものもあればうまくいかなかったものもあります。

その中で、エネチェンジという会社でやらかしてしまったので、その概要をここに記します。

まず、エネチェンジの会社概要は、Wikipediaの説明では以下のようになっています。

ENECHANGE株式会社(エネチェンジ、英: ENECHANGE Ltd.)は東京都中央区京橋に本社を置く、「エネルギーの未来をつくる」をミッションに掲げ、脱炭素社会をデジタル技術で推進するエネルギーテック企業。2020年12月東京証券取引所マザーズ市場に上場。

https://ja.wikipedia.org/wiki/ENECHANGE

電気料金の比較サイトのエネチェンジというサービスで有名ですが、ここ数年は電気自動車の充電器の設置事業を拡大させています。

その影響から経営は赤字です。

電気自動車への充電は、長いスパンで見ればメジャーになっていくと思われますが、ここ数年で安定した収益があげられそうなイメージがいまいちつきません。

また、監査法人から会計について指摘が入って、有価証券報告書の提出が延長されていることも気がかりな点でした。

ただ、

「充電器の設置に対して補助金の収入がある」

「今年、JICという国が主に出資している機構のファンドから資金提供を受けた」

「この会計方式は、海外のEV事業では一般的なことだと会社は説明している」

という点もあり、

「この1年ぐらいで倒産することもなさそうだし、株価も下がっていて貸株利率も高いから、反発を期待して持ってみようかな?」「それで株価が倍ぐらいになったら売ろうかな?」

「つまり、わたしの貸株戦略にぴったり?」などと考え、最終的には2000株以上買い集め、購入した平均価格は1株あたり500円台前半でした。

ちなみにエネチェンジの貸株金利は変動がありつつも7.25%であることが多かったです。

しかし、結果的に監査法人から指摘された会計の問題はすんなり解決せず、”期限までに有価証券報告書が出せない”→”上場廃止”となる危険性が高まったことから、6月下旬から7月上旬にかけて株価が大暴落したのでした。

ENECHANGE

ストップ安が続いてなかなか売れなかったのですが、わたしの場合、夜間の取引で260円ぐらいのところで全株を処分することができました。

その後株価は200円を切るところまで行ったのですが、結果的に上場は維持されることになり、現時点で400円台後半まで戻しています。

つまり、損切りせずに持ち続けておけば損失をかなり抑えることができたわけですが、これはあくまで結果論でしかありません。

結果として50万円ほどの損失になりましたが、判断としてはあまり後悔がありません。

当初は、”海外のEV事業でこの会計は一般的”という会社の説明を信用して、ある程度株価が下がったとしても持ち続けようと思っていました。

しかし、6/27に公表された外部調査委員会の調査報告書の公表に関するお知らせの内容を読んで、エネチェンジからの撤退を決めました。

その理由は、デジタル・フォレンジック調査により復元された、”削除されたSlackでのCEOの発言”です。

会社として適切に会計処理をしていると表向き言っていつつも、SlackでのCEOの発言は意図的に粉飾決済をやろうとしているようにしかわたしは読めませんでした。

かなり生々しい内容で、この調査報告書は一見の価値有りです。

そのへんのノンフィクション小説より面白いかもしれません。

結論として、とりあえず今回の決算はうまく収められたとしても、こういった考え・発言をするCEOが大きな実権を握る会社にわたしは投資したくありませんから、損切りを即決しました。

もともと、CEOの城口氏の経歴がピカピカすぎたり、新興の赤字会社なのに”ENECHANGE INSIGHT VENTURES”というのを開いて他社を表彰してたり、怪しげな要素は株購入を検討している時点から感じてはいました。

が、まさか上場廃止の危機がこんなにすぐにやってくるとは。

わたしの見立てが甘かったとしか言いようがなく、これによる50万円ほどの損失は勉強代ととらえています。

うまくいっている銘柄

一方で、いまのところ成功している事例もあります。

出前館はここ3年ぐらい株価が右肩下がりでしたが、株価・業績に底打ち感があって、配達代行がうまくいっていることと今後のヤフーショッピングとの連携を考えると、復活する可能性は十分あると感じていました。

そして、貸株金利は年利2~4%といったところです。

出前館

今週、出前館は自社株買いを発表し、一時ストップ高を付けました。

出前館は3000株以上買い集めており、含み益になっています。

そのほか、クラウド録画プラットフォームを提供しているセーフィーという会社も貸株金利2%ぐらいで今のところうまくいっています。

まだ赤字ですが、「サブスクリプションサービスのため一度黒字化すれば安定して収益が入ってくる」「単なる監視カメラだけじゃなくて、工事現場などにも使われており用途の広がりが期待できる」といったところに注目し、買ってみました。

ということで、エネチェンジの損失をカバーできるまでには至っていませんが、貸株銘柄でうまくいっているものも出てきています。

まとめ

金利が高いものにはそれ相応のリスクがあるということを身をもって思い知りましたが、逆にいうとそこに注意すれば貸株は利用する価値があると思います。

ポテンシャルがあるけど低迷している株を安値で買っておき、その間配当はでないけど代わりに貸株金利をいただきつつ長期保有するやり方は、わたし個人としても自分の運用スタイルにぴったりはまります。

同様の考えをもつ方は、貸株も検討の余地があるかもしれません。

ということで、一部痛い目にもあいましたが、この体験記がみなさまの貸株利用の検討材料になるようだと幸いです。

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